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聴覚障がい者インタビュー​
新しい働き方がくれたもの

D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)のマスコットイラストの画像

「リコーのこと。」と題して、リコーのD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を考える社内ニュースに聴覚障がい者へのインタビュー記事が掲載されました。この記事はPekoeの目指す世界観そのものであり、ご紹介させていただきます。

当事者たちの生の声。
聴覚障がいを持つ飯田さんと、その上司の高橋さん。お話の中から、私たちが普段見落としがちな「はたらく」の本質が見えてきました。

​プロローグ

最近よく聞く「ダイバーシティ」。これは直訳すれば「多様性」という意味です。私たちリコーも、社員の多様性を重要視することを中期経営計画の中で掲げています。

​でも、ふと冷静になってみて、なぜ多様性が大事なのでしょうか。多様性を大事にすると言っているリコーはどんな取り組みをしているのでしょうか。そんな多様性に関する色々を、ディーとアイと一緒に見ていきましょう。

ダイバーシティのマスコットキャラ「D」のイラスト

D( ディー )

好奇心旺盛で素直な子。難しいことはちょっと苦手。

インクルージョンのマスコットキャラ「I」のイラスト

I ( アイ )

物知りで真面目な子。面倒見の良いお兄さん肌。

​第1部 データアナリストとして働く

D&Iマスコットキャラクターの画像

D&I:

今日はお話聞けるのを楽しみにしてきました。よろしくお願いします。

飯田さん&高橋さん:

よろしくお願いします。

高橋さんと飯田さんのイラスト
Iのマスコットキャラのイラスト

I:​

早速ですが、飯田さんは今どんな仕事をされているんですか?

飯田さん:

データアナリストとして、市場にある複合機の利用状況を分析しています。分析した結果はMFPを開発している社内設計者に提供して、開発に役立ててもらっています。たとえば、私のデータ解析結果としてある機能の利用率が極端に低いことがわかったら、それをお伝えして別の新しい機能に開発のリソースを割り当てるかどうか判断していただく、といった具合です。

時には関係者にヒアリングを行うこともあり、常に素早くお客様の求めているものを提供できるように頑張っています。

飯田さんのイラスト
マスコットキャラ「D」のイラスト

D:

データアナリスト…かっこいい!

マスコットキャラ「I」のイラスト

I:

飯田さんが今のお仕事をしていて楽しいのはどんな時ですか?

飯田さん:

最近はPowerBI*で分析する仕事が増えており、扱いにくいデータを見える化して新しい事実を発見した時はすごく楽しいです。

 

*マイクロソフトが提供している、簡単にデータ分析ができるソフト

 

また、今までは聞こえないせいで会議内容がわからないことが多々あったんですが、オンライン会議においては音声認識Pekoe*とTeamsトランスクリプトのおかげでみんなの会議での発言がわかるようになってきました。言ってしまえば働きぶりがよく見えてきたんです。これがすごく面白くて。

飯田さんのイラスト
リコーが提供している聴覚障がい者向けコミュニケーションサービスPekoeを使って会議をしている様子

Pekoe:リコーが提供している聴覚障がい者向けコミュニケーションサービス

マスコットキャラ「D」のイラスト

D:

「面白い」って、どういう意味?

飯田さん:

「こういうことが褒められるんだな」「こういうことをすると叱られるんだな」「こういう発言をするとカッコよく仕事ができる人に見られるんだな」とか、そんなことがわかってきました(笑)。これまで気づけなかったものなので、すごく面白いです。

飯田さんのイラスト
マスコットキャラ「D」のイラスト

D:

私が飯田さんのチームメンバーだったら、こんなとこ見られてると思ったら話す内容考えちゃうな…。

マスコットキャラ「I」のイラスト

I:

反対に、大変なことはありますか?

飯田さん:

今大変なことは、出社するとみなさんマスクをしているので唇の動きが見えず話が分からないことですね。コロナ前で言えば、会議ではいつも聞こえる人にPC通訳*をお願いしていたので、「負担をかけてしまって申し訳ない」思っていました。

*話している内容を、メモ帳などのToolを用いてPCの画面に文字起こしすること。雑談などは省略されてしまいがち。

飯田さんのイラスト

​第2部 障がいと共に

マスコットキャラ「I」のイラスト

I:

聴覚障がいをお持ちであるとお聞きしています。どのくらいのレベルのものなのでしょうか?

飯田さん:

生まれつき耳が聞こえず、補聴器を外すと何も聞こえないというレベルです。障がい名で言えば「感音性難聴」というものになります。

補聴器をすれば音としては聞こえますが、音の聞き分け、判別は出来ません。対面の会話では唇の動きを見て理解しているので、マスクをされると完全にアウトですね。恐らく、英語がわからない人が英語を聞いているのと同じ感じではないかと思っています。

飯田さんのイラスト
マスコットキャラ「D」のイラスト

D:

いきなり全く知らない言葉の世界に飛ばされてそこで仕事しろなんて、考えただけで恐ろしいよ…。

マスコットキャラ「I」のイラスト

I:

そんな障がいを持っている飯田さんですが、コロナによる働き方の変化は何かありましたか?

飯田さん:

私のチームではコロナによってほとんど全員がリモートワークになったことで、働き方が急激に変わったように思います。

これまでの会議といえばリアルに集まって行うもの。聞こえない私にとってはその場で書いてくれる議事録などが頼りで、リアルタイムで得られる情報量が少なく、参加した感なくただ座ってるだけのことも多くありました。納得感、達成感のある仕事というのが、なかなか出来なかったんです。

ですが今は、会議はオンラインです。PekoeとTeamsトランスクリプトで誰が何を話してるのか、リアルタイムで分かるようになりました。それによって、自分がいつ発言したらよいかのタイミングも掴めてきました。30年働いてきて、ようやくやっとみなさんと同じ土台に立てているのかなと感じています。

飯田さんのイラスト
マスコットキャラ「D」のイラスト

D:

リモートワークが増えたことで聴覚障がいを持つ方が働きやすくなっているなんて、考えたこともなかった。

飯田さん:

これまでは、上司が私の障がいを配慮して会議参加を免除してくれることがありました。ですが今は、良い意味でそういった配慮がなくなりました。みなさんと同じように、当たり前のように会議に出席して、自分からも報告したり、そういったことが増えたように感じます。とても嬉しいですね。

また、それにともなって周囲の私に対する印象も変わってきたように思います。「コミュニケーションができるので安心して任せられる」と思っていただけるようになったのではないでしょうか。

飯田さんのイラスト
マスコットキャラ「I」のイラスト

I:

飯田さんをマネジメントする立場の高橋さんは、何か意識されていることはありますか?

高橋さん:

飯田さんは、聴覚障がいの方がこれまでやってきていないような仕事をするようになりました。それは嬉しいことですが、飯田さんにとっては、新しい挑戦をしないといけないことを意味します。その際に、マネージャーとしては、後押し、フォローすることを意識しています。

高橋さんのイラスト
マスコットキャラ「D」のイラスト

D:

フォローって例えば?

高橋さん:

たとえばプレゼンテーションなどは、やったこともなく、やることを想定すらしていなかったことでした。大勢の方に自分の発言が正しく伝わっているかを確認することが難しかったからでしょう。そのため、プレゼンテーションをするにあたっては、事前に内容を細かく確認する、少人数の場から始めるなどして、少しずつ慣れていってもらえるようにしました。このようなフォローはいつも心がけています。

高橋さんのイラスト
マスコットキャラ「D」のイラスト

D:

はたらきかたの変化による飯田さんの仕事の変化を、チームみんなでフォローしているんだね。

マスコットキャラ「I」のイラスト

I:

飯田さん、最近の仕事で何か印象に残っている出来事はありますか?

飯田さん:

これまでだったら絶対に参加していなかった、知らない人が多く参加している会議に出席したことがありました。そこで、分析結果を自分の言葉で、堂々と報告できたんです。そこからは自信が付いたのか、今は当事者の一人として会議に参加して、恐れることなく発言できるようになりましたね。

飯田さんのイラスト
マスコットキャラ「D」のイラスト

D:

すごい!私も始めて会議で発言した時は緊張したけど、意見を聞いてもらえて嬉しかったな。

マスコットキャラ「I」のイラスト

I:

そんな飯田さんの成長を間近にご覧になっている高橋さんは、何か感じていることはありますか?

高橋さん:

飯田さんはこれまで誰かの指示で仕事をしていました。常に周りに迷惑をかけないようにと考えながら仕事をしてきたと思います。

それが近年のコミュニケーションツールの発展によって、今まで隠れていた自身の強みを活かせるようになりました。課題を探索し、自ら提案し、チーム、組織の仕事のやり方を改革し、業務効率、業務品質の向上に挑戦してくれています。そんな姿を見ていると、「将来的に聴覚障がいという言葉はなくなるんじゃないか」と思うほどです。

会社が推奨している「自律型人材」として、様々なツールを用いて自分の強みを発揮していくのも大切なことだと気づかせてもらいましたね。もう一つ、私自身について振り返る大きな気付きもありました。

高橋さんのイラスト
マスコットキャラ「D」のイラスト

D:

​大きな気づき?

高橋さん:

リモートワークになる前は、正直言って飯田さんがこんなに仕事ができると思っていなかったんです。リーダーとして常に平等であることを意識しながらも、どこかで「飯田さんは障がいを持っているから」という気持ちがあったのでしょう。

それが、リモートワークになって「飯田さんのスキル」と会話をするようになった。そうすると、「こんなことも出来るのか!」というのに気付かされたんです。これは本来リモートワークであろうがなかろうが気付けることだったと思います。コミュニケーション方法を見直せばもっとメンバーの力を発揮させてあげられるのでは、と考え直す機会になりましたね。

高橋さんのイラスト
マスコットキャラ「D」のイラスト

D:

たしかに私もそういう思い込みってある気がする…。そういった偏見をなくして周囲の人たちと向き合えば、もっとお互いにとって良い関係になれるのかな。

​第3部 未来に向かって

マスコットキャラ「I」のイラスト

I:

コロナがもたらした変化によって、飯田さんの「はたらく」は大きく変わったと思います。そうした経験をふまえて、「はたらく歓び」とはなんだと思いますか?

飯田さん:

コロナ以前は、会社に行っても誰とも喋らずただ座って仕事をし、気づけば1日が終わる。そんな日が多かったように思います。 周囲の話し声や話している仕草は見えていますが内容が分からないので、孤独感のようなものがありました。 生活のためだから頑張れるけど、どこか物足りないなと。

今はリモートワークになり、先程言ったようなツールの活用で、会議でみんなの言っていることがリアルタイムでわかるようになりました。会話の内容がわかる安心感で開発業務にも積極的になれるし、会議でもどんどん発言できる。そして、それに対してのみんなの感想も聞くことが出来る。

飯田さんのイラスト
マスコットキャラ「D」のイラスト

D:

私たちにとって当たり前のことが、飯田さんにとっては当たり前ではなかったんだよね。

飯田さん:

おっしゃるとおりです。そして、みんなと同じように働けるようになったことで「自分はチームメンバーやお客様の役にたっているんだ」と思えるようになっていきました。自分の存在価値に自信を持てるようになったんです。

今は日々の仕事に達成感を得られています。心に余裕のようなものも芽生えてきました。すごく簡単な言葉で言ってしまえば、はたらくことが前よりも楽しくなりました。 この達成感が私にとっての「歓び」かもしれません。

飯田さんのイラスト
マスコットキャラ「D」のイラスト

D:

はたらくことが楽しくなった。それってすごく単純だけど、すごく大きい変化だよね。

マスコットキャラ「I」のイラスト

I:

今後リコーでどんな挑戦をしていきたいですか?

飯田さん:

リコーの中には様々な技術があり、TRIBUSのように自らが抱く社会課題に挑戦するチャンスがあります。そういったものを活かして、聞こえない人が騒がしい飲み会に参加しても一緒に楽しめるウェアラブル的な装置を開発したいですね。飲み会って、今は手話ができる人同士でしか楽しめない場なんです。

これが今1番欲しいもので、同時につくりたいものですね。

飯田さんのイラスト
マスコットキャラ「D」のイラスト

D:

そんなものがもし出来たら、私も聴覚障がいを持つ方との飲み会に行ってみたい!

マスコットキャラ「I」のイラスト

I:

上司の高橋さんは、今後の飯田さんに期待していることはありますか?

高橋さん:

これまでは我慢してしまっていたこと、諦めてしまっていたことがあったと思います。これからは、諦めず、常に挑戦し続けていってほしいと思います。

高橋さんのイラスト
マスコットキャラ「I」のイラスト

I:

最後に、何かこの場を使ってリコーの仲間に伝えたいことがあれば教えてください。

飯田さん:

音声認識のおかげで聴覚に障がいを持つ私のような人でもダイレクトなコミュニケーションができるようになり、コミュニケーションのハードルはなくなりつつあります。

私はこのコミュニケーションのハードルがなくなった世界で、データアナリストとして周りの仕事のやり方を変えていきたいです。更に今後は、お客様のDXに貢献できるような機能やアプリケーションを提供していきたいと思っています。皆さん一緒に頑張りましょう。

飯田さんのイラスト

高橋さん:

皆さんもこれまで様々な場面で、自分の限界を感じてしまうことがあったかも知れません。ですがテクノロジーの進化はすさまじく、便利なツールが出てきています。たとえば私は今飯田さんとオンラインでコミュニケーションを取っていて、他のメンバーとの差を感じることはありません。これは、文字起こしツールや、それを飯田さんが巧みの使うことで実現されていることです。

自分にあった様々なツールを活用することで、限界を決めずにいろんなことに挑戦していっていただきたいと思います。

高橋さんのイラスト
マスコットキャラ・DとIのイラスト

D&I:

飯田さん、高橋さん、ありがとうございました!

​第4部 インタビューを振り返って

マスコットキャラ「D」のイラスト

D:

リモートワークの影響がこんなところにもあるなんて、考えたこともなかったよ。

マスコットキャラ「I」のイラスト

I:

飯田さんではない、ある聴覚障がいを持つリコーグループの仲間がこう言っていたんだ。

「聴覚障がいを持つ社員として、してもらうことが当たり前、周りからの理解を求めるだけではダメ。こちらからも相手に理解してもらえるように努力しなきゃいけないと思っている。今は、周りをサポートすることも自分のやりたいことの一つ」だって。

マスコットキャラ「D」のイラスト

D:

前向きで素敵なコメント。

マスコットキャラ「I」のイラスト

I:

「誰かに喜んでもらえる」って、きっと本当は凄く嬉しいことなんだ。はたらくことを通してそれを実感できた時に、僕たちは「はたらく歓び」を感じるのかも知れないね。

マスコットキャラ「D」のイラスト

D:

うん、そうかも知れない。私たちが届けているこの記事も、誰かに喜んでもらえたら良いな。

※Microsoft、PowerBI、Microsoft Teams は、米国Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標または商標です。

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